とちぎ教科書裁判通信

大田原市の扶桑社版歴史・公民教科書採択取り消し裁判の私的記録集

2013-01

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「月刊ボランティア情報 2013年1月号・市民文庫書評」

『「尖閣問題」とは何か』豊下樽彦 著 岩波書店 定価1,020円

評者 白崎一裕

尖閣諸島などの領土問題というと強烈な政治的課題で話題にする事を避ける傾向もあるかもしれない。しかし、経済のグローバル化の影響で、もの・ひとの交流は近隣諸国をはじめ世界各地とも絶えることがない。一般市民としても、領土問題を含む主権の課題をどのように考えるべきなのか、思考の整理をしておくことが必要だろう。戦後日本の政治体制は、基本的にアメリカ占領下の延長にあり、冷戦時代も東西冷戦終了後もアメリカ世界戦略の枠組みの中で外交・主権問題を考えておけばよかった。しかし、アメリカ覇権とドル通貨体制のゆらぎが、これまでのお気楽な日本の立場を変えることとなった。換言すれば、高度経済成長期の延長で商売と政治は別物という、これまでのスタンスが簡単には通用しなくなる事態になってきたということだ。

この原因は、歴史に学ぶのが一番。著者は、同じ第二次大戦敗戦国のドイツの場合と比較をする。ドイツにとって「過去の克服」はヨーロッパという国際社会に再び「復帰」できるかどうかの分水嶺であり、自らの力でこの課題をクリアしていったドイツは、その後ヨーロッパ統合の軸に座ることになる。ところが日本の場合は、自らの努力で「過去の克服」をおこなって東アジアの国際社会に「復帰」するという課題に取り組む前に、アメリカの冷戦戦略のなかで「国際社会」に「復帰」を果たすこととなったのである。加えて、パートナーシップをとるべき東アジアの近隣諸国は、日本の植民地支配を受けた国々でもあるということが問題を複雑化させている。

これらの歴史的視座に立ち戻って考えると、領土問題の本質がみえてくる。それは、著者が米国ファクターとよぶ対米従属外交のなかで、日本が主体的な外交を放棄していることからくる問題だということだ。これを超えていくために日本は、第二次大戦の教訓から国際法の発展を志向する戦略をとり、すべての近隣諸国およびアメリカ、中国などの大国に対しても「中立・主体的」な対外的位置を確保しなければならない。

著者は、次のように提言にしている。急速な勢いで大国になって「大国ナショナリズム」に煽られやすく国際社会で如何にふるまうべきか学習過程にある中国と、戦後の長きにわたって「超大国」としての地位にあった幻想にとりつかれ「単独行動主義」をとるアメリカという二大大国の狭間に、日本は存在している。その日本は、韓国やロシア、ASEAN諸国との提携を深めるなかで二大大国の「単独行動主義」を抑え込む平和原則を国際社会のルール(国際法)として確立していく努力をすべきだというのである。最後に著者が具体例としてあげている米国ファクターのひとつを紹介しておこう。尖閣諸島は魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島の五島からなるが、最後の二島(久場と大正)は、アメリカ軍の「射爆撃場」としてアメリカ軍の管理下にあり日本人が立ち入れないようになっている。しかし、この二島でのアメリカ軍の訓練使用は1979年以来おこなわれていない。それにもかかわらず、この二島について日本政府はふれないようにしている~~~。さて、読者のみなさんは、このことをどう考えるだろうか。
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プロフィール

白崎一裕

Author:白崎一裕
1960年生まれ。とちぎ教科書裁判(現在のところ結審しているので元)<本人訴訟>原告。今後の裁判を準備中、反貧困ネットワーク栃木共同代表、ベーシックインカム・実現を探る会代表。

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