とちぎ教科書裁判通信

大田原市の扶桑社版歴史・公民教科書採択取り消し裁判の私的記録集

2017-11

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国際人権規約・個人通報制度に関する書評

● 以下は、栃木県で私の知る限り、もっとも総合的・精力的にボランティア・NPO活動の総元締めとして活躍するとちぎボランティアネットワークのニュースレター「月刊とちぎVネットボランティア情報」の
「市民文庫」欄に書かせていだいた書評である。
掲載号は、2008年6月号(VOL152)。

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『個人通報制度って知ってる?――自由権規約選択議定書の実現をめざして』
申惠手・阿部浩己[監修] アムネスティ・インターナショナル日本支部国際人権法チーム[著] 発行 現代人文社 発売 大学図書
定価・本体800円プラス税


幕末の英雄、坂本龍馬のよく知られたエピソードに次のようなものがある。彼は「刀よりピストル、ピストルよりも万国公法が武器になる」と言っていたそうだ。この「万国公法」は、今の国際法といわれるものだ。しかし、現代の我々日本人は、龍馬よりも、その「国際法」についての重要性を認識しているといえるだろうか。特に戦後の「人権」をめぐる国際法の発展についてどれほどの意識をもっているだろう。

まず、1948年採択の世界人権宣言。そして、その後に採択される「国際人権規約」(1966年採択)がある。この「国際人権規約」は二つの条約から成り立っている。ひとつは、労働基本権や社会保障や教育への権利を扱う「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(「社会権規約」)であり、もうひとつは、身体や生命に関する権利、拷問や奴隷的な非人間的取り扱いを受けない権利などを定めた「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」だ。そして、後者の「自由権規約」には、「選択議定書」という付属の条約がふたつある。ひとつが、今回の書評であつかう「自由権規約第一選択議定書(個人通報制度)」で、もうひとつが「自由権規約第二選択議定書(死刑廃止議定書)」だ。

この「個人通報制度」というものは、国際人権法の発展の上で、画期的な意味合いをもつものだと考える。「人権」という思想は、西欧において神の下でのすべての人間の平等というキリスト教(自然法)などの思想を背景に、宗教戦争や農民戦争・各種内乱を経て20世紀の二度の悲惨な世界大戦の反省のもとに鍛えられてきた。そして、国際人権法は、この地球上に暮らす全ての人々(人類)の、その「ただひとり」の人権を尊重し擁護するということの制度的裏づけとして、この「個人通報制度」を設けたといえる。この制度は、個人が人権侵害を受けた(すなわち、国際人権規約違反ではないか)ということを、国際機関である国連自由権規約委員会に訴えることができるものなのだ。これまでも、個人通報の1500件が受理され、審査の結果420件を超えるケースで人権侵害が認定され(2006年7月現在、日弁連パンフより)、各国政府に勧告をおこなっている。その結果、オランダの失業保険受給手続きにおける男女の不平等な取り扱いや、フランスの国籍理由による軍人年金支給の差別的扱いが改正されている。

ところが、日本政府は、この二つの選択議定書を批准していない。したがって、現在のところは、上記の画期的な「個人通報制度」が有効に使えないということになっている。しかし、日本国憲法第98条2項「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」とある以上、ふたつの国際人権規約(あるいは、すべての国際人権関連の国際法)をもっと、日本の裁判や行政・労働・福祉・教育などの現場で使うことが必要なのだ。そういう国際法の国内法への適用を進めることで、上記の「個人通報制度」の批准を政府にはたらきかける世論を盛り上げることができる。本書では、この「個人通報制度」の有効性とその制度獲得のための目標がわかりやすく説明されている。この「個人通報制度」を活用すれば、国連の自由権規約委員会から日本国内の人権問題として指摘されている「刑事捜査の問題性・被拘禁者の処遇・死刑制度・女性に対する制定法上の差別・婚外子差別・在日コリアン、アイヌ、被差別部落などマイノリティ集団に対する差別(1998年審査)」などを含めた、多くの人権問題の進展に大きく寄与することは間違いない。われわれは、幕末の龍馬を見習い国際法への感受性を鋭くして、自由・平等・友愛・寛容な世界をつくる努力をしていくことが求められている。

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プロフィール

白崎一裕

Author:白崎一裕
1960年生まれ。とちぎ教科書裁判(現在のところ結審しているので元)<本人訴訟>原告。今後の裁判を準備中、反貧困ネットワーク栃木共同代表、ベーシックインカム・実現を探る会代表。

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