とちぎ教科書裁判通信

大田原市の扶桑社版歴史・公民教科書採択取り消し裁判の私的記録集

2017-11

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『条例のある街―――障害のある人もない人も暮らしやすい時代に』野沢和弘著 市民文庫書評

『条例のある街―――障害のある人もない人も暮らしやすい時代に』野沢和弘著 
ぶどう社 定価(1700円+税) 

評者・白崎一裕
(月刊とちぎVネットボランティア情報VOL151、2008年5月号に掲載)

2006年12月に国連総会で障害者権利条約が採択され、日本政府にも批准が求められている。また、お隣の韓国からは、障害者差別禁止法がアジアでは香港に続いて制定される、というニュースもはいってきた。このように国際法や諸外国では、障害者の人権擁護における「法の発展」ともいえる状況が続いている。しかし、日本ではながらく各障害者団体から「差別禁止法」の制定を求める運動がありながらその実現にはいたっていない(これは、国連人権規約委員会からの勧告もうけている)、また、国連の子どもの権利委員会からは、障がいのある子ども達の教育が、インクルージョン(包摂統合・ささえあい)教育の観点から不十分であると何度も勧告をうけているありさまである。
 
そんな日本の千葉県で、画期的な「障害者差別禁止条例」が誕生した。著者の野沢さんは、その条例誕生の人々の詳細な流れを“さわやかな”文体で綴っている。野沢さんは毎日新聞記者の仕事をしながら、重度障がいのあるお子さんの父親の立場から、これまでも障がい者の人権擁護の運動を展開してきた。その野沢さんが、この条例策定の中心となった「障害者差別をなくすための研究会」の座長となったのだ。会の委員は公募で募られた。また、さまざまな障がい者当事者の「差別される側」の人たちだけではなく、いわゆる「差別する側」の人々にも参加してもらおうということで、企業側の人びとなども参加している。会は、差別の具体的な事例を県民から募りその結果集まった800を超える事例の検討から出発する。だが、そこからが大変だ。差別事例の検討でも、それぞれの委員の立場の違いが鮮明になる。たとえば、知的障がい者と聴覚障がい者では、そこにまったく違う世界が展開しているのだ。ここで、話せば分かり合える、などというお説教はまったく通用しない。むしろ、なかなか理解しあえないーーーけれども、なんとか、合意をとりつけ「条例案」に結実させたいーー、この「思い」が最後まで研究会をひっぱっていったのだろう。また、条例制定までのプロセスは、住民側の主張と議会の対立や、はたまた知事と議会とのズレなど、まさに現在の日本の地方自治・市民参加の問題点が一度に吹き出てきたような状況にみまわれた。特に議会との「攻防」は激しいものがあり、いったんは、条例案を取り下げる事態にいたった。しかし、再度の9月議会で反対していた県議会会派のなかから修正案がまとまってきてなんとか成立にこぎつけたのだ。
 もちろん、修正された条例は、国際的な差別禁止法や障害者権利条約の水準から見れば、まだまだ、不十分なものといえるだろう。たとえば、条例策定にあたって、特に抵抗の大きかった「教育分野」などは、「本人や保護者の希望しない学校への入学を強いること」を「なくすべき差別」とされていたものが、その表現を弱めて「十分な説明を行わないで、その希望しない学校に入学させること」となったり、悪質な差別事例について県知事が公表できることになっていた条項を削除したりしたというようなことが多々ある。
 しかし、この千葉の試みに、日本の民主制の発展の観点から高い評価をしたいと思う。それは、「公論」というものの力をまざまざとみせつけてくれているからだ。やらせではない千葉県民のべ3000人、県内30箇所でおこなわれた「公開」タウンミーティング。「公然」と集められた800件近い差別事例。「公平」に公募で集まった条例研究会の委員の面々。ここには「公開・公然・公平」という公論に欠かせない三つの要素が凝縮されている。ヤミ取引や暗黙の根回しということからは遠い世界だ。そして、これが、意外に横のつながりの少ない様々な障がいのある人びとの連帯にもつながったのだろう。
 
評者個人は、この千葉の条例のような動きを、ぜひこの栃木県でも実現させたいと考えている。
「障がいのある人もない人も共に暮らしやすい『栃木県』づくり条例」!!いかがだろうか?この問題に関心のあるすべての県民への呼びかけのつもりでこの本をご紹介させていただいた。

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プロフィール

白崎一裕

Author:白崎一裕
1960年生まれ。とちぎ教科書裁判(現在のところ結審しているので元)<本人訴訟>原告。今後の裁判を準備中、反貧困ネットワーク栃木共同代表、ベーシックインカム・実現を探る会代表。

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