とちぎ教科書裁判通信

大田原市の扶桑社版歴史・公民教科書採択取り消し裁判の私的記録集

2017-07

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月刊ボランティア情報 VOL170 『京ガス男女賃金差別裁判 なめたらアカンで!女の労働』屋嘉比ふみ子著 書評掲載

『京ガス男女賃金差別裁判 なめたらアカンで!女の労働』
屋嘉比ふみ子著 明石書店 定価1800円+税

評者  白崎一裕

新人類・しらけ世代(1960年代前半生まれ世代)の評者は、大変生意気ながら、労働組合・全共闘世代・戦後民主主義のどれもあまり信用していなかった。しかし、本書は、そんな浅薄な懐疑心を徹底的に破壊する力をみせてくれる。

著者は、1981年(株)京ガスにシングルマザーとして入社。会社には、組合がありその組合員として入社間もない組合大会で質問をする。すると突然何人かの男たちに「女は黙ってろ!」と罵声を浴びせられる。ここが闘いの原点だ。「こんなひどい男女差別がある職場では人として生きることはできない」と考えた著者は「男性中心」組合批判、不当指名解雇撤回闘争、おんな労働組合結成、地方労働委員会での闘い、と行動を深化。この間には、すさまじい著者への嫌がらせや差別が連続しておきる。が、それに屈することなく「男女賃金差別是正(京ガス男女賃金差別裁判)」を求めて京都地裁に提訴する。この裁判闘争を支える思想が、ペイ・エクイティ(コンパラブル・ワース)=同一価値労働同一賃金原則だ。同一価値労働同一賃金の思想は新しいものではない。すでに1951年のILO100号条約として採択され、日本も1967年に批准はしている。しかし、日本政府が国際人権法についてよくやる手だが、批准はするが国内法の修正などをしない理念法にとどめていたのだ。著者は、この政府がお題目として無視してきたペイ・エクイティを実現すべく裁判の中心思想に据える。ペイ・エクイティは、「性に中立な職務評価」であり、なおかつ、女性個人や男性個人の「人」を評価するのではなく「職務内容」の評価をするということだ。日本では、労働の評価というと企業・組織に対しての忠誠の度合いを能力主義的に評価するものが主流でこれに性差別がからみ女の労働の評価を二重におとしめてきた。このことに対して、ペイ・エクイティは、性の違いにかかわらず異なる職種・職務でも、それらの価値が同一・同等であれば、同一の賃金を支払うことを求めている。人間の尊厳ある労働についての評価とは何か?という問題意識がここには深く刻み込まれていると思う。
この裁判は、「賃金格差は女性差別による」という画期的な一審原告勝訴をもたらす。その後の裁判闘争経過は本書を読んでいただきたいが、ぜひとも、以下のことを、強調しておきたい。

現在、高度福祉国家・人権先進国とされる北欧諸国は昔からそうであったわけではない。北欧の著者世代が、立法・行政・司法において女性・障害者・組合活動などあらゆるマイノリティ草の根運動を通じて具体的な権力行使のありかたを変革してきた結果、現在のような国家となっているのだ。言葉が力にならない、思想が現実を変革しない、という「伝統」の日本と何という違いだろう。しかし、著者・屋嘉比さんは、ひとりの「単独者」としてその「伝統」に立ち向かい社会を変えていく不屈の闘いを継続してきた。そして、いまも闘い続けている。
「個人的なことは政治的なこと」というフェミニズムのスローガンを観念論ではなく実践的政治思想として男性中心主義(家父長制)に対してつきつけている本書は、評者も含めた後続世代への偉大なる模範テキストなのだ

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プロフィール

白崎一裕

Author:白崎一裕
1960年生まれ。とちぎ教科書裁判(現在のところ結審しているので元)<本人訴訟>原告。今後の裁判を準備中、反貧困ネットワーク栃木共同代表、ベーシックインカム・実現を探る会代表。

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